水の硬度

ミネラルウォーターを買う際など、水の硬度が気になったことはありませんか。「そもそも硬度って何?」「聞いたことはあるけど意味は分からない」という方もいっらっしゃるかもしれません。硬度とはカルシウムやマグネシウム含有量のことで、含有量が多いほうを硬水、少ないほうを軟水といいます。染色は水を使って行うため、きれいに染めるためにはこの硬度が重要なポイントの1つになります。

 弊社がある桐生市には渡良瀬川と桐生川の二つの川が流れています。水源が違うため、二つの川の性質は異なっています。桐生は昔から織物、染色が発展した地域であります。とくに、桐生川に近い地域で染色工場が点在しました。これは、水の硬度が低い(つまりカルシウムやマグネシウムがあまり含まれない)ことが要因であったと思います。硬度が高いと染めたものがくすみやすくなってしまいます。従って、鮮明な色の帯や着物を多く輩出した桐生はとくに水質が重要であったと考えられます。

硬度が高いということは、染色にとって必ずしも悪いということなく、逆にそれらを利用して染める方法もあります。

弊社は渡良瀬川に近いところにありますが、硬度を下げる薬品の開発のおかげでこの地で設立できたのだと思います。

水と染色は切っても切れない関係です。水の性質を理解してこそ良い染色に結び付く事が出来ます。水質管理も重要な染屋の仕事のひとつと言えます.

 

絹の光沢

絹は他の繊維にはない独特な光沢をもちます。そのため、着物やスカーフなどにするとその風合いが生かすことができます。ではなぜ独特な光沢がうまれるのでしょうか?今回はその光沢について説明したいと思います。

絹糸は外側のセリシンと内側のフィブロインの2層構造からできています。精練(精練については別の回で述べます)という工程によって外側のセリシンを溶かすことでフィブロインが表面に出てきます。このフィブロインは数種類のアミノ酸からできており複雑な構造を構成しています。この構造と断面が不規則な三角形であることによって、絹の美しい光沢が生まれます。

ただし、精練の工程のやり方で光沢が少なくなることもあります。絹は天然繊維なので蚕の産地や種類、繭のできる季節によっても光沢の度合いが異なってきます。

更に糸には通常″撚糸″といって強度を増すために撚りをかけます。その撚りが多くなるほど光沢が減ります。それは反射光の広がりが大きくなってしまうからです。

絹糸を扱うということは、まず構造を知ること。構造を理解してこそ絹の最大の良さである、美しい光沢を表現出来ると思います。その為にも日々染め屋として知識を深めていかなければと思っております。

 

家蚕絹と天蚕絹

絹には桑の葉を食べる蚕が作った絹、いわゆる普通の絹の『家蚕絹』と桑の葉以外の葉(くぬき、かしわ、栗、なら、ひま等)を食べる『野蚕絹』があります。

野蚕絹』の主なものは、「天蚕絹(山繭絹)、柞蚕絹(タッサー絹)、エリ蚕絹(ヒマ蚕絹)、ムガ蚕絹」などが知られています。

野蚕絹』は、おおまかに2つに分かれています。① 天蚕絹:高級で珍重されている。   ②柞蚕絹:インドヒマラヤ地方原産(インド柞蚕絹と中国柞蚕絹、今は中国柞蚕絹が主)
『野蚕絹』は、組成はタンパク質から成る絹といっても、家蚕糸とは異なる組成と繊維構造をもってます。そのため精練方法や染色性も異なってきます。染色性は家蚕糸に比べて劣ります。ただし異質な光沢や、しゃり感のある風合いがあり、ニット製品などに好んで使用されます。 特に光沢は普通の絹と違ってギラギラ光る部分もあり、それらが乱反射して、織ったり編んだりした時にとても面白味のある製品が作られます。

染色する立場から申しますと、野蚕絹は精練(絹の光沢やしなやかさをだすための加工)に手間がかかり難しいので、うまく行わないと染色時に、染めムラが発生したり、光沢が損なわれたり大きな欠点になり、せっかくの野蚕絹の持ち味を上手に出すことが出来ません。逆に精練・染色が上手くいったときは、非常に趣がある仕上がりになります。染めひとつで大事なお客様の製品の仕上がりに差が出来てしまいますので、日々勉強の毎日です。

 

参考文献

川口 浩 (1991)『やさしい科学 絹の知識百科』染織と生活社.

肌荒れ

数年前迄は、現在の相場価格よりかなり絹糸の相場価格が安く多くの機屋さんが、絹織物を織っていました。弊社もそれに伴い絹糸の染色がメインで仕事を請け負わせていただきました。染め屋の仕事は繊細な細い糸を扱うので手袋をはめず素手で作業を行う事が多いです。その頃の私の手は肌荒れせずに、ツルツルの肌でした。絹糸に含まれるアミノ酸のたんぱく質が肌に良い作用を与えていたと思われます。

しかし、近年絹糸の相場価格が上昇し機屋さんの絹織物が減って、化学繊維を扱う量が増えてきて、私の手は肌荒れを起こすようになりました。

最近、幸いに絹製品が再び見直され、絹糸の染色依頼が増えて私の手荒れも少し良くなってきました。絹ってやっぱり凄いなぁと感じております。皆さんも絹製品に触れて感じてみて下さい。絹の持つパワーで皆さん元気になりましょう。

カビの色変化

お客様から、糸が汚れているから落として欲しいとクレームを受ける事があります。

そこで原因を調べていくと、いくつかの事柄が考えられます。

1つは染料による汚れ、水や機械のさびによる汚れ、油脂やグリースによる油汚れ、更にはカビによる汚れ等です。

そこでここではカビによる汚れについてお話いたします。

糸を染色加工して最終工程で乾燥を行います。その際に気を付けることは乾きムラがない様に、何度も確認作業を繰り返します。しかし季節や天候、また,お客様の都合により袋に入れたまま1~2か月放置された状態等いくつかの要因でカビが発生することがあります。

カビははじめ赤くなり、時間とともに黄色、最後に青く、点で汚れた様に発生します。

染料の汚れなら薬品で落とすことが可能ですが、カビは赤いうち(初期)は、薬品で落とせることが出来ますが、それ以外は簡単に落ちないので、この段階でカビの汚れと判断します。

カビ取り処置を使用することにより、加工した製品(糸)が、ダメージを受けてしまいますし、カビは人体にも悪影響を及ぼすのでカビを発生させないためには日ごろの対策が重要でもあります。

 

 

 

乾燥仕上げ

絹糸を染色して、仕上げ加工までの工程を行い、最後に糸を乾かしますが、その場合、絹糸は強制的な熱風乾燥ではなく、自然な乾燥を行います。それは、強制乾燥は静電気が起きたり、絹糸本来の柔らかさが失われてゴワゴワした風合いになってしまいます。自然乾燥は完全に乾くまでにかなりの時間がかかります、更に乾燥の途中でつるしてある糸を上下さかさまにしてかわきむらがないように配慮します。これらは絹糸本来の風合いを出すためには欠かせない作業となります。

このように、絹製品を作るためにより良いものつくりを行うには時間と手間をかけなければなりません。

 

 

よもやま話

注目

以前、糸を染めていて、部分的に汚れがついていることに気が付き汚れを落とそうと水洗してみましたが落ちる気配がありませんでした。次に洗剤などを使い再度洗いましたが、おちません。そこで、原因を調べてみると冬季で水道管が凍結して錆が水の中に含まれていて、それが糸に付着したことがわかりました。錆は鉄分であり簡単には落とすことができないのです。そこで、それを落とす薬品を使い落すことができました。一概に汚れといっても色々あり、状況を把握してそれに応じて対応をしなくてはならないという一例でした。

よもやま話 その2

注目

温泉に行ったときにお風呂に入って石鹼を泡立てようとしてタオルに
石鹼をこすってみたがいっこうに泡立たなくて苦戦されたという思いを
されたことがありませんか?これは温泉水や海水などにふくまれる
マグネシウムやカルシウムイオンが石鹼に含まれる成分と反応して
泡立ちを妨げていることが原因です。染色においても同様に薬品や
染料も水の性質によって染付きが悪かったり洗浄がよくできなかったり
します。したがって、それらを行う前に水の処理を行ってから
作業を行っております。

汚れ

糸を染色や仕上げ加工をしていながら時々汚れがついていることに気が付くことが
あります。そんな時水洗いだけでは落ちない汚れがしばしばあります。そんなときは
どのような汚れかをよく判断して作業したなければなりません。例えば汗汚れは薄いアンモニア
を使うとか・・・。染工場といっても染、仕上げだけの知識だけではなくクリーニング店的な
知識も必要になる場合もあります。