家蚕絹と天蚕絹

絹には桑の葉を食べる蚕が作った絹、いわゆる普通の絹の『家蚕絹』と桑の葉以外の葉(くぬき、かしわ、栗、なら、ひま等)を食べる『野蚕絹』があります。

『野蚕絹』の主なものは、「天蚕絹(山繭絹)、柞蚕絹(タッサー絹)、エリ蚕絹(ヒマ蚕絹)、ムガ蚕絹」などが知られています。

『野蚕絹』は、おおまかに次の2つに分かれています。
高級で珍重されている【天蚕絹】とインドヒマラヤ地方原産(インド柞蚕絹と中国柞蚕絹、今は中国柞蚕絹が主)の【柞蚕絹】です。

『野蚕絹』は、組成はタンパク質から成る絹といっても、家蚕糸とは異なる組成と繊維構造をもってます。そのため精練方法や染色性も異なってきます。

染色性は家蚕糸に比べて劣ります。ただし異質な光沢や、しゃり感のある風合いがあり、ニット製品などに好んで使用されます。 

特に光沢は普通の絹と違ってギラギラ光る部分もあり、それらが乱反射して、織ったり編んだりした時にとても面白味のある製品が作られます。

染色する立場から申しますと、野蚕絹は精練(絹の光沢やしなやかさをだすための加工)に手間がかかり難しいので、うまく行わないと染色時に、染めムラが発生したり、光沢が損なわれたり大きな欠点になり、せっかくの野蚕絹の持ち味を上手に出すことが出来ません。

逆に精練・染色が上手くいったときは、非常に趣がある仕上がりになります。染めひとつで大事なお客様の製品の仕上がりに差が出来てしまいますので、日々勉強の毎日です。

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