以前、ある織物会社の番当さん(以下A氏)からこんな依頼がありました。
染色の立会依頼
「染色をお願いしたいが、色がとてもシビアな織物なので、私がそちらに色合わせに行って、染色中に微調整をして貰いたい」
というものです。
色合わせは、自然光で北側で行いたいとの事で条件を決めていただき、当日を迎えました。
赤味が足らない
そして、弊社の担当が色合わせ微調整を行って、A氏とやりとりを行っていると、なぜかA氏から「赤味が足らない」という要求がありました。
弊社も3人くらいで色を見てみましたが、こちら側の見解は赤味は足りていると全員が思いました。
でも、A氏は織物会社の代表として来ているし、その先の販売会社とのパイプ役でもある営業職でもあるので、むげに赤味は足りているとも言えず、言われた通りに赤味を足してOKを貰い染色を終えました。
赤味の微調整
その後の織り上った製品の仕上がりの色を最終的に見比べはしなかったのですが、恐らくA氏は押しの強い人だったので、それで押し通したと思われます。
その後も同じ色に関して同じ様な色合わせが何度かありましたが、色の微調整での赤味のところは同じ事の繰り返しでした。
人によって見え方が異なる
その後しばらくして、何かのメディアで
『人はそれぞれに色盲や色弱を持っていて、人それぞれによって色の見え方が異なる』
という事を知りました。
あの一件は、そういう事だったのかと当時の事を思い出しました。
測色機の限界
本来は測色は、CCMという測色機で色を数値化して色を見ればいいのですが、弊社の場合は絹を扱っているので事情が違います。
絹糸の断面は異形の三角形で、測色の場所が違うと色の数値の出力が違って出てきます。
また、糸は立体であるため測色機は糸の影を拾ってしまいます。濃度もCCMの受光面のあて方によってバラついてしまいます。
糸の測色に関しましては、原始的ですが現在でも人の目に頼らなければならない状況です。
染め上がった染糸の確認
このようにして肉眼で確認しています。画像を見てもわかるかと思いますが、立体的な糸はツヤや陰で色が変化します。
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